これまでに、インバウンド関連で私にとってはとても参考になる内容が多いということで、「やまとごころ.jp」というウェブサイトをご紹介しておりましたが、もう一つ「トラベルボイス」というサイトのメルマガにも登録しています。(→こちらのサイトも、インバウンド関連の仕事や事業に取り組んでいらっしゃる方にはよく知られたサイトではないかと思います)
そして先日のメルマガでは、8月に在日米国大使館商務部と観光庁が共催した日米ホスピタリティ・マネジメント・ウェビナー「日本の観光業界のV字回復・再生に向けて」の基調講演において、セントラルフロリダ大学ローゼン・ホスピタリティ経営学部の原忠之准教授という方が、ゼロベースから考える日本のインバウンド政策と今後の日本版DMOの方向性についてお話しになられたという内容が、「今、ゼロベースから考えるインバウンド政策、日本版DMO(観光地域づくり法人)のあり方とは?」というタイトルで紹介されていました。
その中に、
政府や自治体がインバウンドを振興する真の目的は、外貨収入を得て、その国や地域に住む人たちの生活水準の質の維持または向上を実現するため
という一文があり、また
2018年の世界主要国の経済成長率を比較すると、世界平均が3.3%、G7の国々の平均2.2%に対して、日本は1.3%にとどまっている。「こうした数字からも国民の生活水準の質を維持・向上させるには、輸出産業を奨励して外貨を稼ぐべきと言える」として原氏は、2018年の輸出額1位の自動車12.1兆円、2位の半導体4.2兆円に対し、2019年の訪日客消費額は4.8兆円と半導体を上回っており、有望な外貨獲得手段であると述べた。
とも書かれていました。
確かに国際観光を経済的観点から見た場合、その国における国際観光収入は輸出高、国際観光支出は輸入高と見なすことができ、国際観光も貿易の一形態(「見えざる貿易」)ということになりますね。
と、ここで私の頭には、ある中国語が浮かびました。
それは、
「引進来」と「走出去」
これは中国の歴代指導者のうちのお一人である鄧小平氏の時代に打ち出された「改革開放(国内における経済・政治体制の改革と対外開放)政策」における戦略の重要な内容として使われた言葉で、「引進来」は外資や進んだ技術、人材の導入を、そして「走出去」のほうは対外投資や国外で先進的な知識や技術を習得するといったことを指しています。(→ちなみに、中国語の「走(zou)」は「歩く」という意味で、「走る」の場合は「跑(pao)」と言います。この二つの言葉を日本のメディアで見たり聞いたりしたことがあるという方もいらっしゃるかもしれませんね。またこの「改革開放政策」が実施されてから30年余り経った2010(平成22)年、中国が国内総生産(GDP)の規模で日本を抜いて世界第二位の経済大国となったことは皆さんご承知のことだと思います)
そしてこの言葉を国際観光に当てはめて考えてみると、
「引進来」は海外の皆さんに日本(秋田)に旅行に来てもらうこと(インバウンド)で、「走出去」は私たちが海外旅行に出かけること(アウトバウント)になるなぁーと。
さらに「貿易」という視点で考えると、私自身中国では貿易業に従事していたわけですが、併せて色々とお手伝いさせていただいた県や貿易促進協会さんの関連事業においても、メインは「走出去」(県産品の輸出、海外市場における販路開拓)だったなぁーと。
今後“見えざる貿易”として「引進来」(インバウンド)事業を考えていくことができるようになれば、行政機関においては、観光関連の部署と貿易関連の部署が協働してこれまでとは違った視点での新たな施策や取り組みが考えられるようになったり、また貿易促進協会さんなどの貿易関連の団体では、これまでとは異なる業種の企業にも入会していただける可能性が広がり、それによって実施する事業の幅も広がったりするのではないでしょうか(→縦割り組織だとムズカシイ……?)。
また、まぁこれはごく限られた国との間でのことになるかと思いますが、インバウンドを通じて民間人同士の交流、相互理解を深めることで、国家間の関係(政治的関係)に影響を受けない民間ベースでのビジネス環境の構築に寄与することになるのではないかとも考えています。
さらにインバウンドの取り組みは、外貨の収入源となってその地に経済的な豊かさをもたらすだけでなく、そこに暮らす人々の精神面にも大きなメリットをもたらしてくれるものだと思うのです。
どうでしょう?
※ご参考までに今回ご紹介したメルマガの記事はこちらです。
・トラベルボイス
今、ゼロベースから考えるインバウンド政策、日本版DMO(観光地域づくり法人)のあり方とは?
私自身は、日本版DMOの運営の仕方についてのお考えや事例もとても参考になりました。
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